拳法防具展望  


鉄面を打撃する事を最大の特徴とする日本拳法、恒常的に頭部を直接打撃する危険な拳法競技の安全性を少しでも向上するには拳法防具の改良と科学的知識が必要。徳大式防具開発で培った技術を公開する。             更新 2008年8月28日
拳法用グローブの展望
徳大式防具面 徳大式面パット 拳法用グローブ展望
2008年8月28日更新 2008年9月15日更新

 防具面

 安全対策に衝撃緩和の必要性は、最近の拳法大会において床面に衝撃吸収マットを使用している事から大会主催者も認識していると考えられる。
昭和60年秋に徳島市でも防具練習を原因とする重大事故が発生した(事故当時三段、意識不明のまま5年後に死亡)。この事故が一因になり徳島県内の拳法団体は分裂を繰り返し現在もその状態は続いている。
全国的で同様の事故は過去に何度も発生している。
当時の道場師範が防具面改良を模索した時に意見を述べさせて貰ったが、今となるとその頃の知識不足を否めない。
頭部負傷を原因とする重大事故はあらゆるスポーツで発生する可能性がある。
日本拳法の特徴は防具着装状態で頭部を直撃打撃する事にある。
競技形態から防具面が最重要防具に位置するのに改良が遅れている何故だろうか。
昭和初期の創世記から防具面ふとんには木綿綿が使われており最新資材と比較して衝撃緩和特性が高いとは考え難い。
徳島大学渭水拳友会として平成17年春から拳法防具の改良に取り組み、徳大式防具として衝撃緩和構造の面パットとグローブを開発した。
既に開発期間は3年半を経過し改良も進んだ、その効果は徳大拳法部員が常用しており実証したと考えて良い。
開発目的として徳大拳法部員の拳負傷防止対策として一面もあった。
昭和42年から40年近く拳法を続けているが昭和時代には現在ほど拳を痛める事は無かったと記憶している。
昭和63年から関西面は8mm面金に移行しつつあった、徳大でも平成時代になってから8mm面金に切り替えた。今になって考えるとその頃に拳負傷が多発した。
 何故7mmから8mm面金に変更したのだろうか大きな疑問が残る。。
後頭部上部鋼線が下向きに曲がるのを防止したいのが理由と聞いた事もある。
私なら曲がるからこそ安全だったと考える、曲がらなければその力は頸部負担を増加させる。
鉄筋ベンターを利用すれば曲がりなど簡単に元に戻せる、現在は試合会場床面にマットを敷く場合が多く曲がる可能性は低くなっているし、恐らく修正工具について検討不足だろう。
特筆すべきはこの変更は防具面価格上昇に大きく影響した。
理由は8mm面金は7mmより相当高い。
此までの経験と防具開発関与から防具面の重量と鋼線間隔が拳負傷に大きく関係しているのは間違いないと判断した。
学生時代から10年近く使用した関東面は重いとは感じ無かった。
如かしながら関西面に比べると打撃された時の衝撃が大きいのは構造的欠点ではあった。
関西面に比べると面金間隔が狭く縦筋があり鉄筋に囲まれる面積が狭い事が打撃反力の局部集中を僅かに低下させていた。
平成時代になり8mm面金使用が始まり、面金重量増加は打撃反力を増加させ結果として拳負傷を増加させた。
側頭部には耳環部鉄筋しかなく横打ちに対する衝撃緩和は極めて悪い。
面ふとんには未だに木綿綿が詰め込まれており衝撃緩和材として望ましくない。
3年半の改良開発により多くの問題点を解決し徳大式防具に反映させた。
拳法防具仕様は科学的考証を基に検討しなければならないが使用者の体感も充分反映する必要がある。
特に防具面の重量として使用者が重いと感じるのは基本的に問題がある、如かしながら軽いと感じる必要は無い。
現在の公認8mm防具面の重量はサイズにより多少異なるが2.2〜2.5Kg程度ある。
道路交通法施行規則第九条の五に定める乗車用ヘルメットは2Kg以下である。
自身が何種類かの面金重量について体感したが2Kg以下であれば重いと感じる事は無かった。
現在常用している6mm面は実用重量1.6Kg以下であるがここまで軽くする必要も無いと判断している。
8mm面金本体は約1.7Kgだが7mm面金なら1.4Kg前後に低下する。
現状の面ふとんと面ひもで約0.7Kgあるから8mm面金で2Kg以下を実現するのは難しい。
面ふとんの概算体積は2,000cm3ある、一般的なクッション材の比重は0.1だが低反発クッション材になると0.2程度に増加する。
結果として面ふとん部重量は少なくとも500gになる。
防具面の重量上限を2Kgに限定するならば面金として7mm以下しか使用できない。
自衛隊が採用している徒手格闘術防具面は7mm面金であり重量的仕様は満足していると考えて良い。如かしながら使用材料から判断して衝撃吸収については日本拳法防具面と同じと考えられ。
8mm面金を採用した理由が衝撃緩和効果を考慮したのであれば科学的には正しいと言い難い。
事故防止と拳法普及の観点から次の防具仕様を推奨する。

一般男子用面金   縦筋6〜7mm、横筋7〜8mm
  防具面総重量   2Kg以下
少年・女子用面金  縦筋5〜6mm、横筋6〜7mm 
  防具面総重量   1.6〜8Kg以下

参考
6mm徳大式防具面ST型重量    約1.6Kg
7mm徳大式防具面ST型重量    約1.8Kg

防具面の最大重量については適当数のモデルから意見を聞き取れは簡単に定まるだろう。
防具面の軽量化は多くの練習生が望んでいる、衝撃緩和は衝撃吸収材の適切な選択と構造に由るべきであり重量増加は問題であるまた軽量化は価格低下を導く。
軽量化により拳負傷も間違いなく減少する。
総合的に考えれば軽量化検討は科学的に正しい選択になる。
                              


 拳法用グローブ
日本拳法を練習している者で拳を痛めた経験の無い者は居ないと考えて良いほどだ。自衛隊徒手格闘術でも同様。拳を痛めるのは鍛え方不足と単純に思いこんでいる指導者も多い。
負傷箇所は薬指、小指に多いが中指拳頭を陥没させた選手も見た。
練習あるいは訓練で負傷するのは論外であり、負傷原因は何であれ怪我を減少させねばならない。
拳法練習者の手掌を調べたところ、手長は15〜25cm、手掌周りは17〜25cmの範囲があった。
これだけ差があれば複数種類のグローブが必要になる。
一般用と少年用しか販売されていない理由は選手数の少なさから武道具店も商売にならないからだ。練習者も防具の個人所有が根付いて居らず団体所有防具の使い回しでは最適サイズが無いのは当然と考えている。
適正サイズの防具使用は怪我防止に直結する条件だがこれも認識していない。
販売価格は流通数量に反比例するから少数の場合は割高になる。
拳を痛める負担と金銭的負担を考える場合は、練習継続と練習中止に置き換えても良い。
社会人の冠婚葬祭費を参考にすれば2〜3万円がグローブ価格の上限になる。
徳大式グローブは小、中、大の3種を標準サイズとしているからこれらを基に修正するだけであらゆるサイズの特注仕様が製作可能になる。
徳大式グローブはユニット単位の組み合わせ構造であり元々変更し易くなっている。
「必要は発明の母」と知られている、要望の無い世界に新たな物が創り出されなかったのは当然だった。
数十年間防具改良が進まなかったのは事故防止対策を放置した事に大きく関係している。
事故原因を探求すれば原因が見えてくる、原因さえ解れば問題の解決が可能になる。
拳負傷に最も影響しているのはグローブの衝撃緩衝効果の不足である。
拳法用グローブには合成綿とクッション板が詰め込まれた構造が多い。
胴打ち時にも当てる角度に因っては小指部を痛める事もある。
間隔が広くて重い鋼線を打撃する状況を検証すると、一本の鋼線を打撃する可能性が存在する。
これらが拳に局部的加重を与える状態になり最悪時に負傷する。
原因が判れば問題を解決出来るのは常識である、此まで改善出来なかったのは問題意識の欠格か原因探求能力が欠如していたのだろう。
徳大式グローブの開発と度重なる改良で採用者の拳負傷は激減している。
構造的に考えると、クッション層の厚みは制限されるのでクッション材を如何に効果的に組み合わせるかにある。
市販グローブの如く、同一素材を単純に詰め込むだけなら効果的な衝撃吸収は望めない。
衝撃吸収効果の向上については既に解決したと考えており、次の問題は使い易さであった。
課題は「生手の如く握れる」であった。
煉瓦とか瓦を試し割りする時の拳の握り方が出来るグローブが最良になる。
現状では使い古し内部クッション材が疲弊して漸く握り易くなる。
当然ながら衝撃緩和効果が低下した状態で使用する事になり、拳サポと称する物を拳に併用する。
これではグローブが只の手袋になったと考えて良い。
最近の拳法大会で徳大式グローブを使用する選手を見かけるのが常になった。
拳負傷問題を解決できた現在でも、公式使用について訝り未だに採用を躊躇している者が居るのは残念であり不幸だ。
徳大式防具が最高では無いが現状では最良だろう。

多くの練習者に適正サイズのグローブ種類として次が必要
  
  巨漢用 ・・・・・・・・ (LL)手掌厚みがあり大柄用では窮屈
  大柄用 ・・・・・・・・ (L)
  汎 用  ・・・・・・・・ (M) 標準
  男子小柄用 ・・・・・ (N)撃力に差があり女子少年用は併用出来ない
  女子少年実撃用 ・ (SL)
  少年当格用 ・・・・・ (SM)

日本拳法の普及発展を考えるならば防具改良の必要性に問題意識を持たねばならない。

2010年12月26日


 徳大式面パット
衝撃緩和特性の悪い関東面を学生時代から10年ほど使用した経験がある。
眼から火の出るが如き衝撃を感じた事も数え切れない、これでは練習生も増えなくて当然だった。
科学的に考えれば衝撃吸収材的役割はタオルと面布団に詰め込んだ木綿綿であり不適当な材質だ。
徳大式面パット以外は木綿綿詰めを採用している。
自衛隊徒手格闘術の防具面パットも同様だ、衝撃吸収の必要性と重要性を考えれば早急な改良が望まれる。
本格的な衝撃吸収を初めて実現した徳大式を使った事が無ければその効果を理解していないと言える。
日本拳法は痛くて当然と考えている限り事故は防げないだろう。
面金規定をクリアすれば徳大式防具面パットST型で公式試合出場に支障が無いことを知らない選手が居る。
適正サイズの防具面を使用せずタオルで無理矢理調整している限り装着時間の短縮もならない。
適正サイズの防具面を使うなら頬顎部の微調整幅は数ミリしか無い。
これなら軽く締めてもゆるみ難く衝撃も少ない。
指導者が適切な装着方法を理解してこそ初心者に正しい装着方法を指導できる。
面金形状修正を行わずタオルで無理矢理調整する経験だけでは正しい装着方法指導は無理だ。
防具面の個人所有を組織として推奨せねばならない。