徳大式防具開発顛末

2017年1月2日更新  
徳大式防具開発に平成17年から携わり日本拳法と安全性の関係について知識を得る機会ができた。
鉄面を直撃する関係で拳法練習生の大多数が拳を傷めた経験がある。
拳骨折は本人の社会生活にも大きく影響するが原因を明確に知りうる関係者が少ない。
拳は治療すれば完治する可能性が高いが頭部傷害は重大な後遺症が残る。
公開することにより日本拳法を学ぶ者の怪我防止に役立てば良い。
以下のとおり徳島大学拳法部での実技経験を基にする私見を掲載した。


徳島大学拳法部は昭和20年代に同好会として発足した非常に長い歴史がある。
その後途絶え昭和38年に前野克彦氏が創部した。
現在の徳島大学渭水拳友会長は昭和42年に入部し現在に至る。
平成2年までは日本拳法協会所属し以後は日本拳法会に所属している。
関東面と関西面の両方を利用して経験を持つ。
面を打撃された場合に関東面は衝撃が大きく、関西面は多少衝撃が少なかったと記憶している。
関東面を使用し始めた頃に唇を良く切った嫌な思い出がある。
日本拳法防具面として関西面と関東面の2つが存在すると理解している。
日本拳法最大の特徴である実撃は重要だが僅かな傷害でも防止する防具が必要だ。
現在まで軽微な改造は行われているが本格的な改良は出来ていない。

昭和61年秋に徳島市内の道場で防具練習中に頭部重大傷害が発生した。
日本拳法協会全日本選手権大会中量級中量級の徳島代表として猛練習中であった。
頭部傷害に関する予兆は無かったが突然くも膜下出血を起こした。
当時31歳で参段の頑強な選手であったが5年後に植物人間状態のまま死亡した。
地元新聞には事故記事として掲載されず防具練習の危険性を公表されなかった。
これまで事故が発生すると先天的な頭蓋骨異常があったとかで防具練習が事故原因となった事を避けていた。
この選手は一般青年よりも頑強と知られていた。
頭部傷害は何時誰に起こっても不思議ではないから安全対策は最優先されるべきである。
この事故では関東面を使用していたが過去にも関東、中部、関西でも重大事故が発生したと聞いている。
当時は防具面についての知識も少なく体質の違いが傷害に繋がったのだと個人的に理解していた。

大阪の国立大学との交流試合から関西面の存在を知った。
昭和50年から個人的に関西面を練習に利用し全国大会では関東面を利用した。
関西面はタオルを使用せずに顔面に完全フィットする様にに小さな面布団数個縫いつけていた。
改造により衝撃特性は多少改善されていた。
徳大式防具面の開発により防具面構造が異なれば衝撃度合いが相当違う事を確認できた。
頭部傷害が個人差だけと過去に判断したのは大変な間違いであったと認識している。

平成3年頃から部員の拳負傷が激増した。
徳大拳法部では昭和42年から平成3年頃まで拳剥離骨折は発生していない。
剥離骨折と圧迫骨折が多く拳頭を痛め無い部員は居ない程だった。
グローブの補強とバンテージ、拳サポの利用で傷害を防止していた。
平成17年春に部員の拳負傷が多発したのを知り原因について本格的に調査検討した。
原因は8mm面金規定による面金重量増加とグローブ衝撃吸収性能不足と判断した。
平成17年春から防具面とグローブの改良に取り組み「徳大式拳法防具PAT.P」として公開した。
7月初旬に全部員のグローブを衝撃緩和特性の高いクッション材と交換した。
以後、部員の拳負傷は激減した。
衝撃緩和特性が向上したのを実感し日本拳法発展と安全性向上に寄与すると考え「徳大式防具」として関係者への普及活動を開始した。
平成17年9月初めには全部員の防具面を衝撃緩和特性の高いクッション材と7mm面金に交換した。
試作品試用からから早くも三年以上が経過し衝撃緩和防具面の有効性について確認する事ができた。

2005.3 安全性向上を目的とした日本拳法防具改良に着手
2005.6 改良したグローブと防具面を特許出願
2005.6.25 徳大式拳法防具を名古屋地区で初紹介
2005.6.26 徳大式拳法防具を大阪の昇段級審査会場で説明する。
開発、研究、技術、女子部長等に非公式で説明した。
会場で説明すると事前に予定していた関係者に紹介していたところ開発部長から会場での紹介中止を要請された。
非公式説明後に伝え聞くには徳大式防具を既存武道具メーカーが特許に関係なく自由に製造できるのが公認条件だとの開発部長の見解。
2005.7初旬 部員のグローブを衝撃緩和特性の高いクッション材と交換
2005.9初旬 徳大拳法部員の防具を全て改良方式と取り替えた。
徳大式拳法防具の有償見本配布開始
2005.9.25 神戸大学で開催した全国国公立拳法大会に「徳大式拳法防具 7mm面金」で参加出場
2005.10月末  日本拳法会に徳大式防具を公式試合で使用可能とできる事についての要望書を提出
要望書は顧問(工学部教授)、監督、OB会長名で提出
2005.11.5 拳法会最高幹部会で要望書を検討し部長会での議題とする事を決めた
2005.11.6 徳島で開催した拳法会主催の昇段級審査会に「徳大式拳法防具 8mm面金」で参加出場
2005.11.12 拳法会部長会で要望書を協議し防具委員会で半年かけて検討する事を議決
2005.12.4 朝日新聞朝刊徳島版に安全性の高い徳大式拳法防具について記事掲載
2005.12.10 拳法会用具検討委員会で「徳大式拳法防具」について検討した。
技術部を中心に練習等で試用して実用化を模索する事になった。
2005.12.27 拳法会開発部から「徳大式拳法防具」4セットを受注。
2005.12.28 徳島新聞朝刊「あわースポーツ」に開発経緯の記事掲載
2006.1.5 拳法会開発部に検討用の「徳大式拳法防具」を発送した
2006.1中旬 NPO日本拳法協会の公式試合での使用許可
2006.2.4 拳法会部長会で防具・用具検討委員会が徳大式防具について報告
報告概要
  防具使用は基本的に差違が無い
  クッション材として衝撃緩和材を使用
  グローブは新衝撃緩和材を使用した程度の変化
  防具面については提出資料の裏付けが困難で判断に困る

結論
  半年間、練習での試用期間を経て結論を出す。防具を貸し出してアンケート調査
2006.2.14 徳大式グローブの試作ロット100セットを完売!
2006.3初旬 製品版徳大式グローブ販売開始
2006.3.24 徳大拳法部西日本学生拳法連盟脱会
2006.3.25 日本拳法会開発部長から徳大式防具面で顎負傷(H18/3/9)の報告を受ける
日本拳法全国連盟役員会で負傷事故について報告
2006.4 徳大式グローブ(製品版)は全国的に大好評
2006.6.25 公認防具面を徳大式面布団に取り替えて公式試合(第2回昇段審査会)に参加
2007.12 徳大式グローブVer3製品版完成
2008.4.16 軽量衝撃緩和面パットを普及すべく徳大式防具のネットショップを開店した
2008.9.30 顎負傷(H18/3/9)の説明責任不足を理由にして国公立大会参加を余儀なく中止
2007年徳大開催時に正式な部活で無い東大チームの責任者不在チームを大学として只したのが最高幹部の意向に反したのが実態
2008.12 徳大式グローブ構造が完成し握り易さと開き易さを確立し全国的に普及進む
2009.3 九州地区に法人登記された団体への文書発送を断った事により徳大拳法部の昇段審査受験を停止された。
何時の間にか渭水拳友会拳友会長宅が四国支部所在地になっていた事について拒否する拳法会作成文書。
2009.6.19 日本拳法会の昇段審査受験が再び可能になる
2009.7 大会案内送付を依頼したが断られた、国公立大会開催案内を本年度も送付しないとの事。案内不送付による参加停止。
2010.6.27 吹田市立武道館で催された昇段級審査会において認定外徳大式面パット使用者の1名が公認防具面と取り替えさされた。
認定外徳大式グローブについては何故か問題にならなかった
2010年度 航空自衛隊徒手格闘術で徳大式防具の使用が全国的に増加した
2010.1 快音タイプ開発完了
2011.1.7  少年当格試合用徳大式グローブ販売開始
2012.11 横打ち対応補助クッション開発完了
2013.2 徳大式グローブの全種類を横打ち対応仕様に改良 (特許出願中)
2013.11 強打者も安全に打撃可能なクッション仕様を完成  
2014.5.10  定例部長会で拳法会制定防具着用を条件に国公立大会参加を認める
2015.3.28 徳大式防具の主たる販売先を自衛隊に限定すると公表
2015.3.8 日本拳法会第2回審判講習会にて総務局長が徳大式防具を公認と回答
2015.4.1 徳大式防具は自衛隊関係者にのみ販売限定
2015.6.19  防具改良要望賛同書を公開し同意者・同意団体の募集開始
2015.8.2 防具面マジックバンド固定オプション公開
2015.12.31 徳大式防具販売方法変更、 防具改良要望賛同募集終了
2016.10.9 徳大式防具は2年前から公式使用可能と伝え聞く
 2017.1.1 FHサイズとして女子実撃専用グローブを開発
現在では多くの団体で徳大式防具を使用して頂いています。
軽量徳大式防具面は40歳以上の安全に気を遣う拳法愛好家の採用が多い。
競技試合に参加する選手は公式使用との関係で使用する事に躊躇していると考えられる。
徳大式グローブは年齢層に関係なく好評で全国的に普及している。
徳大式グローブと徳大式防具面パットは構造的に同等でありグローブの評価以上に防具面パットの重要性を認識して欲しい。
拳負傷の原因はグローブ性能不足が最大の原因であり、拳の鍛え方不足だけが原因ではない。
練習生の拳負傷が発生しているなら徳大式グローブを試して欲しい、直ちに改善できる可能性がある。
脳震盪防止用クッション材として従来から使用されている木綿綿よりも最新低反発衝撃吸収材を採用すべきである。
現在の面垂れでは後頭部保護が十分でない。。
徳大拳法部で平成17年7月初旬から試作改良グローブを全員が使用している。
グローブの衝撃緩和不足に基づく拳の負傷は皆無となった。
打撃された相手の衝撃も軽減される事が打撃感が悪くなったとの評価は安全性を優先した考えから考慮しない。

防具の問題点
認定防具規格で規定する所謂ワタ類の衝撃緩和特性は低く頭部障害と拳負傷多発の原因になっている
8mm面金を使用する防具面の総重量は2Kgを超過しており慣性により頸部負担が大きい
グローブは握り難く裸拳同様の正しい拳が造れない
改善要望事項
防具装着が簡単に出来ること。
脳震盪防止対策として低反発衝撃吸収材を採用する。
後頭部保護が充分な後頭部垂れを採用。
面金を打撃するに充分なグローブ特性に改良。
防具面の総重量を2Kg以下にするとともに体格に合わせた選択範囲を設ける
改良防具面の効果
面装着時間   15秒前後
脱着時間     5秒以内
脳震盪防止   ガツンと来る衝撃が無い。(ボンと感じる柔らかい衝撃に変化)
面を外しての休憩  猛暑の夏に特に有効な休憩時に面を外せる。

極めて重要な効果は防具練習後の頭部違和感が非常に少ない
軽度の脳震盪も防止した効果と推察している。

数値は徳大拳法部員での実測値
改良グローブの効果
経験年数に関係なく拳負傷が激減した。
低反発特性により打撃された側の衝撃も減少した。
徳大式防具の開発開始から2014年末で丸10年を経過した。
2013年に自衛隊強豪選手でも拳を痛め難い仕様が完成し2014年秋には皮革寿命延長対策を伏し
効果的であると判断できた。
拳を痛める原因が過大に重い面金と衝撃緩和構造が劣るグローブ仕様であると10年間の実用で証明できたと判断した。
徳大式防具は自衛隊徒手格闘術用として開発を続けた、2015年現在では全国の自衛隊で使われている。
2015.4.1から自衛隊関係者にのみ販売を限定した。