YTS界面化学研究装置開発余話

2009年6月14日

**新型表面張力測定装置の開発**

長年、滴容法による表面張力測定装置に関係しているが全国的にはプレート法が良く知られている。
測定精度と再現性は滴容法が優れているが普及しない、その理由は測定装置として完成していなかったからだろう。この場合の完成とは装置的な問題点を可能な限り改良出来ていない事だ。
先ず大型恒温水槽を採用している事により装置が大きくなり測定温度範囲が限定されている。
高精度シリンジが入手し難い。
シリンジ本体が測定温度で恒温状態にありシリンジピストン精度に影響する。
乾式恒温槽と滴下用シリンジを恒温系外に出す事は実際に試行しなければ不明な部分が多かった。
実際にプロトタイプを製作して実用上問題なく使える事を平成18年からの実用で証明できた。
表面張力測定を難しくしているのは温度関係だが此を機械的に解決する事により個人の測定技術だけが測定精度に影響する。個人の測定技術は特殊な職人技を指すのでなく界面化学上の常識的な知識と取り扱い技術。

**滴容法とプレート法の比較**

滴容法による表面張力測定装置開発に携わり10年以上になる。
プレート法で界面活性剤を実際に測定した経験が無く測定結果の比較が出来なかった。
今夏九州地方の大学から協和界面科学製のプレート法測定装置(CBVP-A3型)を長期間に渡り借りている。。
標準的な界面活性剤としてDTAB,SDS等の測定を通じて比較した。
滴容法に詳しい者がプレート法を比較のため本格的に測定するのは極めて少ないと聞いている。
筆者自身も国立大学の研究者から滴容法は使えないと直接言われた事もあった。
滴容法の利点と欠点について筆者と徳島大学工学部が最も詳しいと言っても過言では無い。

プレート測定システム

協和界面科学製のプレート法測定装置(CBVP-A3型)のアナログ出力に高精度直流信号増幅器(GAIN 100)を接続した。0〜1VFSの電圧を信号変換器でRS232C形式のデジタル信号に変換してパソコンをデーターロガーとして自動測定した。DVS2000システムの恒温水槽から保温配管とマグネットポンプで恒温水を循環させて温度を安定させた。


試料容器   内径48mm市販シャーレ
プレート    24mm幅 白金、ガラス(協和界面科学製)
測定温度   25℃

滴容法測定システム

DVS2000システム
測定温度   25℃
ガラスセル  並型

測定結果

SDSの測定結果

プレート法で測定し易いと考えられているアニオン性界面活性剤でも異なる結果になった。
白金プレートよりガラスプレートが大きな値になるも滴容法より小さい。

DTABの測定結果

プレート法で測定し難い考えられているカチオン性界面活性剤は実用にならない結果であった。。
白金プレートよりガラスプレートが小さい値になるも滴容法より小さい。
CMC以下の測定結果はバラバラになり滴容法と比べようもない。

考察

測定結果には全て測定番号が付けてあり当然ながら実測生データーが存在する。
これ程明確な測定値の違いがありながら研究者が測定方法を検討しないのは理解に苦しむ。
過去の発表データーとの差異を認めたく無いと考るしかない。
DTABとSDSの測定結果に大きな特徴がある。
白金プレートとガラスプレートの測定値の大きさがアニオンとカチオンで逆転している。
この結果が示すのはプレートの撥水性が極めて重要な要素である事。
プレート法では完全に濡れるのが条件だから当然とも言える。
CMC以上の濃度では厳密な値を望まないならどちらのプレートも測定方法も似た結果にはなる。
その程度の精度で良いなら問題は無い。

滴容法でアニオン性界面活性剤が測定し難いと考えられていたが明確な原因は判っていなかった。
DVS2000システムの開発途上で明確になり正確な測定が可能になった。
キャピラリ側面での濃縮皮膜が原因であった。
濃縮皮膜とは知識不足の筆者が適当に現象を表現するために用いた。
キャピラリ洗浄法と温度勾配の除去及び濃縮皮膜除去測定方法等を採用して解決した。
アニオン性界面活性剤測定の問題点がプレート法では必要条件になる矛盾こそが測定方法の優劣についての回答を導き出した。
長くなるので今回はここまでの説明にする。
暇がある読者は矛盾点の説明を考えて欲しい。

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